去年からうちに同居することとなったベタのアグニさん。

尾腐れ病になったりと、不慣れな飼い主のせいで大変な目にあったものの、その後は平穏無事な生温い生活ができる……と思っていたのだが……。

ベタのある朝の出来事……
ある朝ね。
いつもと同じように、いつもと変わらず、日常的に、アグニさんにゴハンを上げようとしたんですよ。
アグニさんのお住まいの部屋は、私の仕事部屋。
冬の間は、日中は私の仕事の様子を見ているアグニさんは、夜になると一人で寝ることになる。
つまり私も夜の間は、アグニさんがなにをしているのか全くわからないままでいる。
まあ、水槽に蓋もあるし、ヒーターも暴走して煮魚ができるようなこともなく、平々坦々と今日を過ごせるかと思っていたんですが…………。
アグニさんに朝食をあげようとしたら、アグニさんが水槽にいないんですよ。

WHY?
水槽には蓋がしっかりしてあるし、狭い水槽に隠れる場所なんてない。
とっさに足を上げて、自分の足下を見たりしたけれども、床にアグニさんが干からびているような、火曜サスペンス的なこともない。

アグニ? アグニ?
慌ててアグニを探す私。
とりあえず水槽を正面から見て、いない。
横から見て、いない。
後ろから見て…………いた。
なんと、アグニさん。
水槽とフィルターポンプの器械の間に挟まって、ビィィーンと棒立ちになっていたのだ。
このフィルターポンプ。
水質維持のために付けているフィルターなのだが、このフィルターを止めるための吸盤が、ダイソン並みの吸引力を持っていて強い。
※普通の状態では最高のフィルター※
恐らく水槽とフィルターの間に魚が入り込まないようにとの吸引力だろうが、フィルターを交換するときも、薄い定規で一つずつ吸盤を剥がしていかないと取れないほど、めちゃくちゃ吸盤が強いのだ。
だが、おそらく、ガラスに生えた水苔がよりにもよって吸盤の下に繁殖し、一つだけ吸盤が弱くなったところに、愚かにもアグニが侵入。
他3つの強大な力の吸盤によって水槽とフィルターの間に挟まって、動けなくなってしまったようなのだ。

アグニィィィィー!!
と、まるで少年漫画でヒーローが傷ついた仲間の名前を絶叫するがごとく叫び、慌ててフィルターをはずす私。
しかし、やっぱり吸盤が固い。
どうにか外したフィルターからアグニがぽろりと出た瞬間……。
アグニがそのまま水槽の横に倒れ伏した。
ベタが横たわったまま動かない……。
死んだって思ったね。
本気で、死んだって思ったよ。

私なんかがベタを飼うからこんなことになってしまったんだ。
毎日食べてる魚には罪悪感がないくせに、どうしてこんなに胸が痛むのか。
そんな詩的な文章が脳裏を過ぎった3秒後。
アグニ復活。

ナニコレ。仮死状態だったってこと?
いやどちらにしろ危なかったんだろうけど……。
動揺のあまり、間違って引っぺがしてしまった水温計が、私の慌てっぷりを示しているが、本当に魚1匹でここまで驚かされるとは思わなかった。
そんなアグニさん。
そろそろ我が家に来て1年が経つ。
人間よりも遥かに短い一生ではあるが、どうか、いつかのときは私の心臓に負担をかけない死に様で逝ってもらいたいものである。
【教訓】水槽の掃除はマメにね。
※コケクロスがオススメ※
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