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あっちこっち飛び猫

小説を書いたりゲームを作ったり、たぶんマルチクリエイター。お仕事も募集中。

Chiyo's「○○」take

落ち着きのない管理人が色々しでかした冒険日記。
★はてブにレスはしないので、返信希望のコメはコメントにしてください★

【お仕事の話】ケーキ工場で単発バイトをした時の話

あれは、私がフリーランスとして働き始めたすぐの頃かな。

チャーリーとチョコレート工場って映画があるじゃないですか。

チャーリーとチョコレート工場 [Blu-ray]

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チャーリーが経営するチョコレート工場はまるで遊園地のような、夢のような世界。

そんな工場で出来るお菓子は世界中の子供に愛されている。

現実世界の工場では、ウンパルンパもいないだろうし、チョコの滝も無いとは思うけど、
でも、クリスマスの時期に出回るあのケーキ達だって、子供の頃は夢のような食べ物だったからね。

一度だけでいいから、ケーキ工場で働いてみたい。

そんな夢を叶えるべく、クリスマスの少し前に単発のケーキ工場のバイトを申し込んでみた。

でも、ケーキ工場で見る夢は、悪夢だったのだ…………。






【広告】




バイトの探し方

ケーキ工場でバイトをするのは簡単だ。

バイトの求人広告に「ケーキ工場での単発バイト!!」等、派遣系の登録求人があったらそこに登録すればOK。



とくに、クリスマス前になると急に増えるので、自分が一番通いやすい場所を選んで登録しにいけばOK。

私も上のサイトのような、求人サイトから地元の単発バイトの派遣会社を見つけ、履歴書も持たずに登録しに行って、いつといつなら行けると知らせて、当日の待ち合わせ場所などを教えられて終了。


「本当にこれでいいのかよ」と不安になったが、夢の工場行きの切符は容易く切られるようだ。

余談だが、ちゃんと「ケーキ工場のバイト」と書かれているところを選ばないと、登録しに行ったものの、派遣された先で永遠洋服のピッキングをやらされた……なんてことになりかねないので、その辺は注意しておこう。



業務内容

工場へ

「朝8時に○○駅の西口。大体○○銀行の前くらいで待っててください」
という、日本文化としてあるまじき適当さで案内された当日。

その目的の場所へ向かうと、恐らく工場行きのバイターであろう人々が既に群れになって立っている。

だが、その群れが至る所に点在し、果たしてどれが目的の工場行きのバスか全くわからない。

しかたがないので、適当に目に付いた女の子に行き先を尋ねると、「ああ、これであってますよぉ~。他の工場行きとかもあってわかり難いですよねぇ~」と馴れた様子で答えてくれた。

意外とコミュ力を使う仕事である。

もっとも、時間と共に現れたバスには行き先が書かれているので、慌てず来たバスを確認すればよいのだろうが、結構気を遣わせる仕事だ。


そんなバスに揺られること30分。

先ほど行き先を尋ねた女の子が、私の後ろで他の人とおしゃべりしている。


「私ぃ。今の彼氏の子供が出来たらぁ。松ぼっくりちゃん』って名前付けよと思ってるんですぅ。可愛くないですかぁ? ほら、運動会とかで松ぼっくりちゃん、一等賞!!』って放送されたらぁカワイイじゃん?」


…………。
………………。



日本の未来に幸あれ


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仕事

女の子の摩訶不思議な話でうたた寝すら出来なかった私だが、工場へ着くと荷物をロッカーに入れ、所属する各派遣会社ごとに集まり点呼。

恐らくバイトリーダーみたいな人がとりまとめているのだろう。

その後、バイトリーダーの指示の元で白衣やら、マスクやらを装着。
靴も長靴に履き替え、近未来の鳥居みたいな、消毒液ミストと、風と、滅菌装置がでる門をくぐる。

手も洗ってしっかり消毒が済むと、今度はこの工場の社員さんに付いていき、いよいよ工場の本拠地へと向かう。

ドアをくぐった瞬間、チョコレートではなく、チーズクリームが川となり、甘ったる匂いが刺激臭となって襲ってくる。

ウンパルンパも一目散に逃げ出すだろう、チーズ臭。

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この時点で既に色々と後悔し始めた私だが、社員さんに指示され、松ぼっくりの女の子の隣で、流れてくるケーキに、きのこの山の上の部分だけを切り取ったようなチョコをひたすら乗せていく作業を始めた。

ゴウンゴウンと流れていくケーキ。
そうだよ、これをやってみたかったんだよ。

そう思って、ひたすら無心にチョコを乗せていく私。
だが、ちょっとおかしい。

隣の松ぼっくりの女の子も、私とは違う部位のチョコのせをしているのだが、そのチョコがめり込んだ状態で私の方へと流れてくる。

止るライン。
ケーキを眺め、何かを相談する社員達。

やがて社員の一人が頭をふりふりやってきて言った。


「クリームが柔らかくてチョコが沈んでしまうみたいなので、クリームの調整をしてくるまで待っててください」


そう言って立ち去る社員。

暇になった我々。
ぼーっと立ち尽くす私に、松ぼっくりの女の子が言った。

「えへへ。チョコ置くときに埋め込んでみたんですぅ」


お昼

松ぼっくりちゃんの妨害はあったものの、午前中ひたすらケーキにチョコを差し込むという、瞑想に近い作業をし続けていた私は、お昼になり食堂へと案内された。

500円でAセットかBセットを選べるようなシステムになっているのだが、他の社食と違うのは、ケーキが食べ放題だという点。

ちょと端が削れていたり、松ぼっくりちゃんの失態でチョコがめり込んでしまったりしたケーキが冷蔵庫に入っており、好きにとって食べて良いらしい。

だが、しこたま甘い空気を吸って、目からも甘味を味わった私は豚の生姜焼きの塩味以外欲しいとは思わず、そして、だれも冷蔵庫のケーキに手を付けていないところを見ると、みんな同じ気持ちなんだろうなと思った。


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午後

午後になり、再び工場へと戻る我々。
昼休憩を挟んだというのに、午前中にあった元気は全くない。

じつは工場内に入るとトイレ休憩すら一切与えられず、立ちっぱなしでひたすらケーキを眺めていなくてはいけないのだ。

トイレが近い上に、快便女王の私は先ほど食った昼食がウンコとなって腹を刺激しないか心配でしかたがない。

恐らく1日に作らないといけないノルマでもあるのだろう。
工場の社員の人達が目に見えて苛立っている。

再びチョコレートをケーキに作業に入る私。

回るケーキ。
流れるチーズケーキの川。

ケーキが回っているのか、私が回っているのか。
地球が回りケーキが回る。

もはや世界と輪廻について考え始めた頃、後ろでドンガラガッシャーンとアニメみたいな音がした。

驚いて振り返ると、ある男の子が運んでいたケーキの棚をぶっ倒したらしい。


激しくグチャグチャになって床に広がるケーキに、「うわぁ……」となる私。
ますます苛立つ社員達。

隣で松ぼっくりちゃんが言った。

「お昼のケーキって、ああやって落としちゃったやつとかも出されてるんですよねぇ」

……ウソやろ?


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帰宅

午後5時間以上も立ちっぱなしで、ひたすらケーキにチョコを置いていた私は、夢もへったくりもなく、よろよろになって着替え、帰りのバスを待ちわびていた。

一刻も早く帰りたい。

飽き性で、同じ場所でじっとしていられず、同じ作業を繰り返すなんて拷問に近い私が、なんでこんなことをしようと思ったのだろうか。

登録制のバイトで良かった。
1日だけで本当に良かった。
髪に染みついた己の甘い匂いが本当に嫌だ。


ここで永遠回るケーキを見つめ続け作業をしている人達は本当に偉いと思う。

そんな達観した境地に立っていた私に、さらなる追い打ちが。


「まぁ~そんないい腕時計しちゃって!!」

突然、近くにいたおばちゃんが敵意も剥き出しにそんなことを言い出したのだ。

「バカにしちゃってさっ。いいカバンも持っちゃってさっ」

明らかに彼女の目線は私を見ている。
いや、私を見ているようで、私を透かした向こうを見ているようにも見える。

困惑する私に松ぼっくりちゃんが言う。

「あの人、思ったことがそのまま口に出ちゃうみたいなんですよぉ」

夢じゃない。これは悪夢だ。

因みに私が持っている腕時計はカシオのありきたりの腕時計。2980円。
バンは汚れてもいい、デパートで吊し売りされていた3980円のものだ。

「若いからってこんな仕事してさっ。私のコトばばあだとバカにしてるんだよっ」

矛先が松ぼっくりちゃんに向いたようだが、誰も彼女のことは気にしない。

なんだろう。

夢のような食べ物は、こんな悪夢のような世界で作られていたのだろうか。


思ったことがそのまま口に出るおばさんは、再び私へと目を向けて口を開いた。



「遊びじゃないんだよ!」


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給料

工場からバスに乗って事務所に帰る頃には辺りは真っ暗。

朝8時から夜7時までかかって事務所に戻り、さらにそこから30分以上も待たされ(日払いのお金を貰う人が沢山いるので)、ゲットしたお給料は6500円。

最寄りまでの交通費とお昼代を考えると、安いのか高いのかわからなくなってくる。

今ではもう少し給料も高くなっているかもしれないし、夜勤もあるので、その場合は1万円近くなるんじゃないかな……とも思う。

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感想

というわけで、愚かな私が夢を見たケーキ工場バイト。

私は性質上1日だけでギブアップしたが、周りの人間に動じることなく、ひたすら同じ行動をし続けても平気な人なら。

そして、ケーキが大好きで、自分が砂糖漬けになっても大丈夫な人なら試してみる価値はあるのではないかと思われる。

おすすめなのは、1日だけでも大丈夫な上に当日日払いということなので、体験……気分でできることだ。

もちろんお仕事なので、やっている間は真面目にやるが、正直かなり精神的に過酷ではあるので……。


あと、ケーキを食べるなら手作りに限るようになる可能性もある。

お料理マム 2 ポケットレシピ 4 手作りケーキ

お料理マム 2 ポケットレシピ 4 手作りケーキ


後日談

工場バイトの後、私はしばらく手作りケーキのお店や自作以外でケーキが食べられなくなった。

いや、もちろん工場は衛生管理はしっかりしていたし、味もたぶん美味しいのだろう。

だが、脳裏にあのぶちまけられたケーキや、心と口が連動するおばさん、クリームの川、回るケーキが蘇り、急激に食欲が減退してしまうのだ。

のど元過ぎればなんとやらで、今では旦那が買ってきたケーキなんかはバクバク食べているが、やっぱり自分からは買おうとは思わない。



そんな話を自分の叔母に話したところ、叔母はこんなことを言った。


「え~やだわぁ。私も工場で作ったケーキはもう食べないわぁ。だって、千夜ちゃんみたいな子がケーキ作ってるなんて……」




……。
夢は悪夢で作られているらしい。







ブログの内容は大体真実ですが、個人情報保護的なコトも考えて多少フェイクを入れてます。
松ぼっくりちゃんの名前とかね……(本当はもっと酷…………ゲフンゲフン)